#109 肥料は形を変えた天然ガス!なぜ中東情勢で肥料が値上がりするのか
#109 ⏱ 00:22:43

#109 肥料は形を変えた天然ガス!なぜ中東情勢で肥料が値上がりするのか

今回は肥料の話!中東情勢やエルニーニョ現象とも絡めて話しました。

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はじめに:肥料と世界情勢に関する質問

こんにちは、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。

今回は、肥料の話をします。 グリーンフィールダーさんより、こんなお便りをいただきました。

リッスン上では、感想をコメントさせていただいておりますが、今回初お便りさせていただきます。

いつも、なるほどと唸りながら番組を拝聴をしております。

今回は、最新の世界情勢からの質問です。

私の所属する会社で、こんな話がありました。

今年は、エルニーノが発生し、不作になる可能性がある。

加えて、昨今の中東情勢の影響で、ナフサのみならず、肥料の供給が滞りがち。

その受給逼迫の結果、肥料価格が上昇するのでは?

という話がありました。

世界の肥料供給の大半は、化学プラントで生産されていると理解していますが、

中東情勢が、なぜ肥料の供給量に影響を与えるのか、わかるようでしたら教えてください。

また、化学プラントからは離れてしまいますが、

エルニーノによる農作物の生産量減と肥料価格に因果関係はあるのでしょうか?

もし質問への回答が難しいようでしたら、肥料プラントの仕組みを教えていただけると嬉しいです。

引き続き拝聴します。

とのことで、お便りありがとうございます。

一通り答えていきます。

肥料の三大要素と窒素肥料の製造

先に結論を言うと、肥料、特に窒素肥料というのは形を変えた天然ガスでして、

これがわかると話が早いかもしれませんね。

それでは言ってみましょう。

作物を育てる肥料には3大要素というものがあります。

窒素、リン、カリウム、それぞれ元素ですね。

元素記号で表すと窒素はN、リンはP、カリウムはKです。

ざっくりしたそれぞれの元素の役割は、窒素は葉や茎を育てて、リンは根や花、カリウムは全体を丈夫にします。

今回の特に主役になるのは窒素です。

中等醸成で一番ダイレクトに効いてくるのが窒素肥料です。

窒素肥料の出発点は実はアンモニアなんです。

これを作るのがハーバーボシュ法というものでして、

1900年頃に生まれたノーベル化学賞も受賞した製造方法です。

空気に含まれる窒素と水素をくっつけてアンモニアを合成します。

化学的には結構ありえないような反応になっておりまして、

それが実現できたのでノーベル化学賞を受賞しています。

ただそれだけじゃなくて、これから話します通り、ハーバーボシュ法で作るアンモニアは肥料になりますので、

当時の食料問題を大きく改善させました。

話を戻しますと、

窒素は空気からたくさん取れます。

実質タダみたいなものです。

問題は水素なんですよね。

今水素の調達は天然ガスから行っています。

天然ガスの主成分はメタンです。

このメタンガスと水蒸気を高温で反応させると水素ができます。

水蒸気改質って言うんですけど、結局は肥料の原料であるアンモニアを作るための原料の水素が天然ガスに依存しているんです。

ここでアンモニアの化学式を見てみますと、

NH3、窒素原子が1つと水素原子が3つですね。

アンモニアを作ろうと思ったら、窒素1に対して水素3必要なんです。

単純に元素の構成だけを見ても結構水素いるだろうなーっていうのが想像がつきます。

つまりはまず肥料の原料のアンモニアはかなり天然ガスの価格に依存します。

この価格が最終的に肥料になった時にどれくらい影響を受けているかっていうのは、いっぱい話した後に最後に紹介します。

出来上がったアンモニアは二酸化炭素と反応させて尿素になります。

これが肥料です。窒素系の肥料を一度整理しますと、まず天然ガスを調達します。

この天然ガスの主成分のメタンに水蒸気を当てて、水蒸気改質によって水素を手に入れます。

私たちの身の回りにある空気と先ほど作成した水素、これらを一緒に反応させてアンモニアを手に入れます。

このアンモニアを二酸化炭素と反応させることで肥料である尿素が手に入ります。

出来上がった尿素っていうのはちょっと水っぽいらしくて、製造の過程で水を飛ばして濃度を上げて粒として固めていきます。

この粒を袋に入れてホームセンターで見るような形で出荷されます。

その他の窒素肥料とリン・カリウムの原料

先ほどは尿素のルートでしたけど、アンモニアからできる窒素っていうのは他にもあります。

硫酸アンモニウムと塩化アンモニウムです。

硫酸アンモニウムは名前の通り、硫酸とアンモニアを反応させれば作れます。

ただ、わざわざそうやって作っているんじゃなくて、世の中の産業で実はもう硫酸アンモニウムができていらないってなっている製造工程があります。

ナイロンです。

カプロラクタムっていうナイロンの原料になる化学物質があるんですけど、

このカプロラクタムの製造途中で硫酸を使っていて、硫酸を中和するときにアンモニアを使用していたんです。

それによってナイロンの原料を作るときに副生物として肥料の原料にもなる硫酸アンモニウムができていたんです。

そしてもう一つ、塩化アンモニウムの方は食塩から作られます。

業界的にはソーダ工業と呼ばれる業界です。

炭酸ナトリウムを作るときに副生物として塩化アンモニウムができます。

塩化アンモニウムとか硫酸アンモニウムとか窒素源としては同じなんですけど、やっぱり若干性能が違うらしくて、細かいところはすいません、私もわからないんですけど、

例えば塩化アンモニウム系肥料だと塩素イオンがミネラルの吸収を助けるみたいなんですけど、その一方でジャガイモみたいな塩素を嫌う作物には使えないとかあるみたいです。

ここまで窒素を見てきましたので、今度はリンとカリウムについて見ていきます。

これらは今までと全然違う形で、窒素はアンモニアが入り口でしたけど、リンとカリウムはアンモニアを使っていません。

どちらも鉱石を使っておりまして、リンの場合はリン鉱石という石が原料、カリウムはカリ鉱石という石が原料になっています。

リン鉱石の方は硫酸と反応させて使ったりとか、もしくはさらにアンモニアと反応させてリン酸アンモニウムを作ることもあるみたいです。

リン酸とアンモニウム。結局1個で窒素とリンの両方を摂取できます。

使い勝手がいいですね。カリウムの方を見ますと、もっとシンプルで、カリ鉱石自体が塩化カリウムで主にできていまして、そのまんま使えるみたいですね。

ここまでの話を整理しますと、窒素はアンモニアが入り口で、リンとカリウムは鉱石が入り口です。

中東情勢が肥料価格に与える影響

それぞれ原料が違いますので、リスクの出方もおのずと変わってきます。

なんとなくなぜ中東情勢が肥料の供給量に効くのかっていうのが見えてきたかもしれないんですけど、

天然ガスですね。

中東から天然ガスも輸入しますので、その影響でアンモニアの原料が作りにくくなっています。

もしくはアンモニアとか尿素を現地で作ってそれを輸出していますので、高くて買いづらいか、そもそも手に入らないか、どちらかの状況になっていると思います。

天然ガスが影響を及ぼしているっていうことは、ロシアの時もそうだったってことです。

実際に肥料価格も値上がりしていたみたいです。

ただ今回もう一個問題がありまして、中東情勢の方はよく聞く言葉ホルムズ海峡が影響しています。

やっぱりここでも影響するんですね。

結局天然ガスも肥料である尿素も手に入ったとしてもホルムズ海峡で足止めされて運べない。

そんな状況になってしまいます。

調達不安の関係で価格も上昇してきますよね。

この価格については農林水産大臣の会見で触れておりまして、現状輸入の尿素単体で見ると14.5%の値上げになっているみたいです。

ただ生産者の方っていうのは複合肥料っていう形で、窒素とリンとカリウムの主要元素が3つ入った肥料を買います。

この複合肥料という観点で見ると、前期比で5%くらいの値上げとのことで、

単純に輸入尿素で見ると14.5%も上がって大変だって騒ぎたくなるものの、実際に農家さんが使う肥料の価格で見ると5%くらいの値上げかなっていう。

まあそれでも5%ってでかいんですけど、10何%までは影響は出てませんよっていうことみたいです。

そしてもう一つ供給に関しては、2026年6月以降に販売する秋用の肥料は量としては調達のめどがついているっていう話でした。

ここについては、あとは購入する人の需要に影響しますので、心配していっぱい買ってしまうと、やっぱり供給が不安定になるっていう状況が生まれてしまいます。

もうこの心理についてはいろんな製品で経験してきたので、なんとなく察してきますね。

足りるとは言われながらも心配だからいっぱい買って足りなくなる。しょうがないですね。

ということで、すでに天然ガスの影響で肥料の価格は上がっています。

農林水産大臣の話では5%っていうことなので、実際に買う人に価格転嫁されているかはわからないです。

もしかするとグリーンフィルダーさんのところの会社で出てた肥料の価格が値上がりするっていうのは、さらに5%から上がってくるかもっていう話かもしれませんね。

エルニーニョ現象のメカニズムと農業への影響

最後にエルニーニョの話をします。

質問いただきました。

エルニーニョで不作になると肥料が値上がりするのか?

まずは、私もそうだったんですけど、そもそもエルニーニョって何なのかっていうところからさせてもらいます。

意外と言葉だけは知ってるけど、理解はしてないですよね。

そもそもエルニーニョっていうのは、南米のペルー沖の海面水温が平年より高くなるということを意味します。

反対に平年より冷たくなるとラニーニャです。

海面水温が高くなる低くなるっていうイメージはついてましたけど、

基準は南米のペルー沖、そこの海面水温っていうことですね。

この海面水温に影響を与えているのが、まず赤道付近の熱い水です。

赤道付近っていうのはやっぱり太陽の光が強く当たるので水温が高くなってきます。

普段はこの水がかき混ぜられていて温度が安定しています。

貿易風っていう風が吹いているんですけど、ペルー沖からインドネシアの方まで、

つまりは太平洋を通って東から西に向かって温かい海の水が流れていきます。

流れていった水を補うように海の深いところから冷たい水がペルー沖では沸き上がってきます。

太平洋規模で大きく水が循環している感じですね。

ペルー沖からインドネシアに上の方は流れていって、

水の底の方からペルー沖のところに水が戻ってくる。そんなイメージです。

その関係で温かい水が流れてくる西の方は温かい海、

反対に下から冷たい水が上がってくる東側は冷たい海という状態になっています。

ただ、それが何かのきっかけで貿易風の強さが弱まってしまうと、

西側にずっと送られていた温かい水が東側に留まるようになってきます。

ペルー沖のいつもは冷たいはずだった海まで温かくなってしまうんです。

これがエルニーノですね。まず貿易風が弱くなってくるので水の循環が少なくなってきます。

本来であれば冷たい水が下から沸き上がるはずだったのが沸き上がってこなくなる。

海の底の栄養が上がってこないんですよね。海の底から来てたプランクトンが減ってきます。

そのプランクトンを食べるイワシとかアンチョビとかが取れなくなってきます。

小魚を食べる鳥の糞が肥料になっていたみたいで、この天然の肥料が減ってしまいます。

そしてもう一つ、エルニーノによって海面水温が上がるので蒸気が増えます。

気温も上がって雨も多くなってきます。これによって植物の生育に悪影響を及ぼすということですね。

これについては植物によるとは思いますけど、普段のペルーの気候に合わせた植物を作っているという形が基本だと思いますので、

そこに対して気温が上がって雨がたくさん降ってってなると、うまく成長はしにくくなるだろうなっていうところがわかります。

そこに合わせて肥料の需要が増えるっていうのはあるとは思います。

エルニーニョと肥料価格の関連性、まとめ

ということで、ご質問にあったエルニーノによって農作物が生産量が減って肥料価格に影響を受ける。

その因果関係があるかって言われると、ないとは言えないんですけど、わかんないですねやっぱり。

あとどちらかというと、今肥料価格は中東情勢の影響が大きいと思います。

もしかしたらエルニーノによって肥料の需要が増えて、今の供給不安に拍車をかけるっていう可能性はありますね。

スーパーエルニーノみたいな言葉も飛び交っているみたいで、そういう言葉が出るとメディアの影響で需要が煽られるっていう可能性は否めないです。

短期的には価格上がるかもしれないですね。

あとはそのタイミングで中東情勢がどれくらい落ち着いているか次第だと思います。

今回は肥料について成分から作り方、中東情勢にエルニーノっていう自然現象までいろいろつなげて話してきましたね。

個人的にはこの回好きです。

単純に肥料の必要な成分だけじゃなくて、実はカプロラクタムの副原料として生産されているっていう工業的な話があったりとか、

実は原料由来で中東情勢に影響があったり、何ならエルニーノっていう自然現象にも影響を受けたり。

私も調べていてすごく勉強になりました。

グリーンフィールダーさん、いいお便りをありがとうございました。

エンディング

今回はここまでです。

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それではお聞きいただきありがとうございました。