汗をかいたあとに風が当たると、涼しく感じます。一方で、蒸し暑い日はいくら汗をかいても暑いままです。どんな時に汗は体を冷やしているのでしょうか?
汗が体を冷やすのは、蒸発するときです。液体が気体に変わるとき、周りから熱を奪います。この熱を「気化熱」といいます。肌の上の汗が水蒸気になるとき、肌の熱も一緒に奪われて体温が下がります。汗そのものが冷たいわけではなく、汗が乾くときに体が冷えるのです。
消毒用アルコールもミストも、しくみは同じ
気化熱を実感しやすいのは消毒用アルコールです。手につけて少し経つと、手が冷たくなります。これも汗と同様に、アルコールが蒸発するときに手の熱を奪っています。
夏の駅前や広場で見かける、霧状の水をまくミストも気化熱を利用しています。細かい水の粒はすぐに蒸発するので、周りの空気から熱を奪って涼しくします。ミストが普及していない時代にも、地面に水をまく「打ち水」によって古くから涼をとっていました。
蒸し暑い日は、汗が乾かない
汗をかいても涼しくならない日があります。湿度が高い日です。
空気が取り込める水蒸気の量には限界があります。湿度が高い日は、空気がすでに水蒸気を多く含んでいて、汗が蒸発しにくくなります。蒸発しなければ気化熱は発生せず、汗は肌に残るだけです。蒸し暑い日に汗をかいても体温が下がりにくいのはこのためで、熱中症のリスクにもつながります。
身近な化学工学湿度100%って、何が100%?湿度100%は空気が水になった状態ではありません。空気が取り込める水蒸気の限界に対する割合というしくみを、霧・季節・露点から説明します。
ミストも同じです。締め切った室内で霧をまき続けると、最初は涼しくなるものの、次第に湿度が上がって水が蒸発できなくなります。
蒸発でどこまで温度を下げられるかは、湿度で決まります。温度計に濡れた布を巻いて風を当てると、表示が下がっていきます。この下がりきった温度が「湿球温度(しっきゅうおんど)」です。乾いた空気なら布の水がよく蒸発するので、大きく温度が下がります。反対に湿った空気ではあまり下がりません。湿球温度は、蒸発で下げられる温度の下限値を意味します。

熱中症予防で使われる暑さ指数(WBGT)の計算にも、この湿球温度が使われています。
工場では、水を蒸発させて水を冷やす
工場でも気化熱が使われています。化学プラントで使う冷却水を作る装置が「クーリングタワー」です。冷却塔とも呼ばれます。
使用する冷却水の量によってサイズや見た目が変わります。主に小型は円筒状、中型になると箱型、大型はくびれた塔の形をしています。

クーリングタワーの上から温まった水をシャワー状に落とし、塔の下から空気を取り込みます。空気は水と反対に、下から上へ抜けていきます。水が落ちていく途中で一部が蒸発し、気化熱で熱を奪います。残った大部分の水は冷えて、塔の底にたまります。
冷えた水はプラント内の反応器や熱交換器へ送られ、それぞれの設備で熱を受け取ります。温まった水は、またクーリングタワーへ戻ってきます。

工業用の冷却塔では、40〜50℃まで温まった水を30〜35℃まで下げる設計が使われます。
クーリングタワーも湿度の影響を受けます。湿度が高い日は水が蒸発しにくく、冷却能力が落ちます。日本の夏は湿度が高いので、冷却水を最も使いたい季節に能力が落ちやすくなります。
まとめ
汗は、蒸発するときの気化熱で体から熱を奪います。湿度が高い日は汗が蒸発しにくく、汗をかいても体温が下がりにくくなります。
同じしくみは工場でも使われています。クーリングタワーは、水の一部を蒸発させて残りの水を冷やす装置です。