木の幹も、切り出した丸太も茶色です。ところが、その木から作ったコピー用紙やノートは、白い色をしています。茶色い木から、どうして白い紙ができるのでしょうか?
紙は、木の中にあるセルロースという繊維を取り出して作ります。木の中で繊維どうしをくっつけているリグニンは、色のもとになる成分です。白い紙を作る工場では、木を薬品と一緒に煮てリグニンを溶かし出し、少し残った分も漂白で取り除きます。
紙が白いのは、色のもとになるリグニンを取り除き、白い繊維を集めて作っているからです。
木は繊維を「のり」で固めたもの
木の成分は、大きく分けるとセルロース、ヘミセルロース、リグニンの3つです。木の幹では、この3つで全体の約95%を占めます。
セルロースは細長い繊維で、紙の主役です。ヘミセルロースは、セルロースの繊維の周りにある成分です。そしてリグニンは、繊維と繊維をくっつける「のり」の役目をしています。木が幹として立っていられるのも、リグニンが繊維を固めているおかげです。

紙に要るのは、繊維のセルロースです。セルロースそのものは白く、木の茶色い色はリグニンから来ています。リグニンが紙に残ると色が付き、光や空気中の酸素で変化して、紙が黄ばむ原因にもなります。
砕いただけの紙は、黄ばみやすい
木から繊維を取り出す方法は、大きく2つあります。木を機械ですりつぶす方法と、薬品で煮る方法です。取り出した繊維の集まりをパルプと呼び、すりつぶして作るものを機械パルプ、煮て作るものを化学パルプと言います。
機械パルプは、リグニンを多く含んだままです。そのため色が残りやすく、時間がたつと黄ばみます。新聞紙が日に当たると黄色くなるのは、機械パルプが混ぜてあり、残ったリグニンが光や酸素、熱で変化するからです。

ノートやコピー用紙には、主に化学パルプを使います。リグニンをできるだけ取り除いてあるので、白く、黄ばみにくい紙になります。
薬品で煮て、リグニンを溶かす
化学パルプは、いまはほとんどがクラフト法で作られています。クラフト法では、まず丸太を細かいチップに砕きます。丸太のままでは、薬品が中までしみ込まないからです。チップが厚すぎても、真ん中が煮えないまま残ります。
次に、チップを薬品と一緒に蒸解釜(じょうかいがま)という大きな釜に入れ、高い温度と圧力で煮込みます。クラフト法の薬品は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを主成分とするアルカリ性の液です。

煮ている間に、アルカリがリグニンを分解して液に溶かし出します。のりが外れた繊維はバラバラになり、繊維だけを集められるようになります。硫化ナトリウムの役目は、リグニンを溶けやすくしながら、セルロースを傷みにくくすることです。

工場では、煮る温度と時間の効き目を、Hファクターという1つの数字で表します。100℃で1時間煮たときを1として、温度が高いほど反応が速く進む分を換算し、煮た時間に沿って足し合わせた数字です。
残ったリグニンを、漂白で除く
煮終わったパルプは、まだ茶褐色です。繊維に、リグニンが少し残っているからです。そこで、洗って薬液を落とし、酸素でリグニンをさらに減らしてから漂白します。

漂白は、色の付いた成分を取り除くか、色の付かない形に変えて、パルプを白くする操作です。
白いパルプを、網の上で紙にする
白くなったパルプは、水で薄めて網の上に吹き出します。このときのパルプは、約99%が水です。網の上で水を切り、フェルトに乗せてロールで絞り、蒸気で温めた鉄の筒(シリンダー)に押し当てて乾かします。乾かし終えると、水分は6〜8%になります。
黒液は、燃料と薬品に戻す
蒸解で使い終わった薬液は、溶け出したリグニンなどで黒くなるので、黒液(こくえき)と呼ばれます。クラフト法でパルプとして残るのは、原料の木の重さの半分ほど(45〜55%)です。木から溶け出した成分の多くが、この黒液に入っています。
黒液は捨てずに、まず蒸発させて濃くします。濃さの目安は、固形分20%ほどの薄い液から、燃やせる75%ほどまでです。使うのは、蒸発缶を5〜6段つないだ多重効用の蒸発装置です。
この装置では、前の缶で出た蒸気を、圧力を下げて沸点を低くした次の缶の加熱に使うので、少ない蒸気で多くの水を飛ばせます。減圧で沸点を下げるのは、フラスコに水をかけて沸騰させる実験と同じしくみです。
身近な化学工学水をかけると沸騰するのはなぜ?沸点は周りの圧力で変わります。ふたをしたフラスコに水をかけると沸騰するしくみを、蒸気圧・富士山・圧力鍋、工場の減圧蒸留から説明します。
濃くした黒液は、回収ボイラーで燃やします。燃料になるのは、溶けていたリグニンなどの成分です。その熱で作った蒸気を、発電や紙の乾燥に使います。
燃え残った薬品は、炉の底から高温で融けた状態で取り出します。これを水に溶かして石灰を加えると、水酸化ナトリウムを含む蒸解の薬液に戻るのです。

クラフト法の工場は、反応、蒸発、燃焼を組み合わせて、薬品を輪の中で使い回しています。木から取り除いたリグニンも、捨てずに燃料として生かしているのです。
段ボールは、あえて漂白しない
白い紙と反対に、段ボールは茶色です。段ボールの原紙は、漂白していないクラフトパルプや、古紙を原料にして作ります。段ボールで大事なのは、白さよりも強さです。
クラフトパルプは強いパルプで、名前もドイツ語で力や強さを表す Kraft から来ています。漂白を強くすると、薬品がリグニンだけでなくセルロースも傷め、パルプの強さが下がります。漂白しないのは、強さを保てて、薬品も使わずに済むからです。

段ボールの強さには、形の工夫もあります。2枚のライナの間に、波形の中しん(なかしん)を貼った構造です。断面に三角形が連なるので、軽くても丈夫になります。なお、白い原紙(白ライナ)を使った段ボールもあり、食品などの箱に使われています。
まとめ
紙は、木の中のセルロースの繊維を取り出して作ります。繊維どうしをくっつけているリグニンは色のもとで、紙に残ると黄ばみの原因にもなる成分です。白い紙を作るには、クラフト法で木を煮てリグニンを溶かし出し、残りを漂白で取り除きます。
溶け出したリグニンを含む黒液は、濃くして燃やし、熱と薬品を取り戻します。段ボールが茶色いのは、白さより強さが大事なので、漂白しないパルプや古紙で作っているからです。
