鉄のフライパンを濡れたまま置いておくと、水が残っていた所から赤く錆びてきます。乾いていた所は錆びないのに、水がついた所だけ錆びるのはなぜですか?

鉄の表面に残った水の中で、鉄を溶かす小さな電池のような反応が進むからです。

水の中にできる小さな電池

濡れた鉄の表面では、場所によって役割が分かれます。鉄が鉄イオンになって溶け出す所と、鉄から流れてきた電子を酸素と水が受け取り、水酸化物イオンができる所です。

電子は鉄の中を、イオンは水の中を動くので、全体がひと続きの回路になります。電池と同じつくりで、局部電池と呼ばれるものです。溶け出した鉄イオンは、水酸化物イオンや酸素と反応して、水を含んだ酸化鉄になります。これが赤錆です。

鉄の上の水滴の中で、電子を出す側から鉄イオンが、受け取る側で水酸化物イオンができ、両方が出会って赤さびになる様子を示した模式図
電池でいえば、アノードが負極、カソードが正極にあたる

乾いた所には、イオンが動ける水がありません。電池の回路がつながらないので、反応はほとんど進まないのです。水が残っていた所だけが錆びるのは、このためです。

目に見えないほど薄い水の膜でも、電池の通り道になります。鉄が錆びやすくなるのは、一般に湿度が60〜70%ほどを超えたときです。

表面に塩やほこりが付いていると、もっと低い湿度でも錆が出ます。塩は水を吸って膜を作りやすくするうえ、水に溶けて電気を通しやすくするからです。

鉄のフライパンや包丁を、使ったあとに拭いてよく乾かすのは、電池の通り道になる水を残さないためです。

化学工学では見えない水を探して防ぐ

工場の配管には、中を流れる液の温度を保つために保温材を巻き、その外側を薄い金属板のカバーで覆います。

カバーの継ぎ目や傷から雨水が入ったり、結露したりすると、保温材が水を含んだままになります。配管の表面に水の膜が残り続け、外から見えない所で錆が進むのです。保温材下腐食(CUI)と呼ばれ、穴があいて中のガスや液が漏れる事故の原因になります。

配管の断面で、外側から金属のカバー、保温材、配管の順に重なり、下側にたまった結露や雨水で配管が錆びて穴があく様子を示した模式図
水は低い所に集まるので、曲がった部分の下側や配管の支えの周りも錆びやすい

ただし、工場の配管はとても長く、保温材をすべてはがして確かめるのは現実的ではありません。そこで、漏れたときの影響の大きさと錆びやすさから、点検する順番を決めます。

最初に探すのは、カバーのはがれや継ぎ目の傷みなど、水が入った疑いのある所です。怪しい所は保温材を外して見たり、超音波で配管の厚さを測ったりして、錆の進み具合を確かめます。カバーの継ぎ目から水を入れない工夫や、配管の錆止めの塗装も対策です。

まとめ

鉄が錆びるのは、表面の水の中で、鉄を溶かす小さな電池の反応が進むからです。工場でも、配管のまわりに水を残さない工夫と見えない所の点検で、この電池が働く場所を減らしています。