台所のお酢には、酢酸という成分が4〜5%ほど入っています。お酢の酸っぱさのもとです。この酢酸だけを集めると、冬の寒さで凍ってしまいます。それなら、お酢も冬に凍るのでしょうか?
混ざりもののない酢酸は、16.7℃で凍ります。純度の高い酢酸を氷酢酸(ひょうさくさん)と呼ぶのは、冬に氷のような結晶になって固まるからです。
一方、台所のお酢は9割ほどが水です。凍るのは水の方で、それも0℃より少し低い温度まで冷やさないと凍り始めません。
酢酸だけなら16.7℃で凍りますが、お酢は0℃より少し低くならないと凍りません。
混ざると、凍る温度は下がる
水は0℃、酢酸は16.7℃のように、混ざりもののない物質は、それぞれ決まった温度で凍ります。

ところが、ほかの物質が溶けた液では、凍り始める温度がそれより低くなります。これが凝固点降下です。お酢で凍るのは水の方なので、溶けている酢酸などの分だけ、0℃より少し低い温度から凍り始めます。

酢酸の側から見ても同じです。水が5%ほど混ざった酢酸なら、凍り始めるのは約10℃です。
酢酸と水の液では、水が多ければ水が氷になり、酢酸が多ければ酢酸が結晶になります。どちらの場合も、相手が多く混ざっているほど、凍り始める温度は低くなります。
このような、液が凍り始める温度と濃さの関係が、固液平衡です。相平衡と呼ばれる考え方の一つです。
化学工学では、配管を外から温める
化学工場では、酢酸をタンクにためたり、配管で送ったりします。配管の中で凍ると流れが止まるので、冬は凍らせない工夫が必要です。
配管の中の酢酸の熱は、配管の壁を通って、外の冷たい空気へ逃げていきます。外との温度差が大きい冬ほど、逃げる熱は多くなります。配管を保温材で覆うのは、この熱を減らすためです。それでも、逃げる熱をゼロにはできません。
そこで、配管の外側に細い管(銅管など)を沿わせたり巻き付けたりして、その中に蒸気を通し、逃げていく分の熱を外から補います。この方法が、トレース(スチームトレース)です。

細い管の太さや本数は、いちばん厳しい寒さの条件で逃げる熱を見積もり、それを補えるように決めます。これは、熱がどれだけ伝わるかを計算する、伝熱の考え方です。
まとめ
混ざりもののない酢酸は16.7℃で凍りますが、ほかの物質が混ざると凍る温度は下がり、9割ほどが水のお酢は0℃より少し低くなるまで凍りません。化学工場では、冬に配管から逃げていく熱を蒸気で補って、酢酸を凍らせずに送っています。

