フリーズドライのみそ汁やスープは、乾いた軽いかたまりです。お椀に入れてお湯を注ぐと、すぐにほぐれて、具の入ったスープに戻ります。乾いたかたまりが、なぜこれほど早く元に戻るのでしょうか?

フリーズドライは、食品を凍らせてから、とても低い圧力の中で氷を溶かさずに水蒸気にして抜く乾かし方です。氷の粒があった所はすき間として残り、かたまりの中はスポンジのようになります。注いだお湯は、このすき間を通ってすぐに中まで入り込むのです。
お湯ですぐ戻るのは、氷が抜けた跡のすき間に、お湯が入り込むからです。

氷が直接水蒸気になる「昇華」
1気圧のもとで氷を温めると、0℃で溶けて水になります。ところが、周りの圧力が約611パスカル(1気圧の0.6%ほど)より低いと、氷は温めても水にならず、直接水蒸気に変わるのです。固体が液体を経ずに気体になるこの変化を、昇華と言います。
約611パスカルは、氷と水と水蒸気の3つがそろって存在できる「三重点」の圧力です。

フリーズドライでは、スープを凍らせて、中の水を細かな氷の粒にします。そのうえで圧力を三重点より低くして温めると、氷は溶けずに水蒸気になって抜けていきます。
乾燥が始まるのは表面の氷からで、氷が抜けた跡は、奥の氷から出る水蒸気の通り道です。凍ったまま乾くので、かたまりは凍らせたときに近い形を保ち、氷の粒の跡がすき間として残るのです。
圧力が下がると、水の沸点も下がります。
身近な化学工学水をかけると沸騰するのはなぜ?冷やしたのに沸騰するのは、沸点が周りの圧力で決まるからです。フラスコの実験を蒸気圧で説明し、工場の減圧蒸留につなげます。
化学工学では、氷を溶かさずに乾かす
化学工学では、この乾かし方を凍結乾燥と呼び、乾燥の操作の一つとして扱います。熱に弱い医薬品や、香りを大事にするインスタントコーヒー、具の入ったインスタントスープなどの乾燥に使われる方法です。
工場の凍結乾燥機は、凍らせた材料の入った乾燥庫を、真空ポンプで100パスカル以下、1気圧の1000分の1以下まで減圧します。氷が水蒸気になるには熱が要るので、乾燥庫の中で熱を加えます。
出てきた水蒸気を集めて取り除くのは、コールドトラップと呼ばれる冷たい凝縮器です。
ただし、熱の入る速さと水蒸気が抜ける速さのつり合いが崩れると、温度が上がって、凍ったかたまりが溶けてしまいます。そうなると凍結乾燥にならないので、熱の加え方は乾燥の段階に合わせて細かく制御されています。
まとめ
フリーズドライのスープがお湯ですぐ戻るのは、氷を溶かさずに昇華させて抜いた跡が、すき間として残っているからです。工場の凍結乾燥機では、圧力を三重点より下げ、氷が溶けないように熱の加え方を制御しながら乾かしています。

