使いかけのケチャップは、容器を逆さにしても、なかなか出てきません。ところが容器を叩いたり振ったりすると、急に勢いよく出てきます。ハチミツの瓶は叩いても流れやすくならないのに、ケチャップが出てくるのはなぜですか?
ケチャップは、ある大きさの力を受けると流れ始め、速く流れるほど粘度が下がる液体だからです。
力で粘度が変わる液体
液体をかき混ぜると、隣り合う部分がずれながら動き、そのずれに逆らう抵抗が生まれます。水や油では、かき混ぜる速さを2倍にすると、抵抗もほぼ2倍になります。抵抗が速さに比例し、粘度が速さによらず一定の液体が、ニュートン流体です。
一般的なハチミツも、ニュートン流体に近い液体です。粘度は温度で大きく変わりますが、叩いたり振ったりしても下がりません。流れやすくするには、温めることになります。
身近な化学工学ハチミツは温めるとなぜサラサラ?冬のハチミツが流れにくくなる理由を、温度と粘度の関係から説明します。白く固まる結晶化との違いを整理し、工場で液体を送るときの温度管理につなげます。
一方、加える力やかき混ぜる速さによって粘度が変わる液体が、非ニュートン流体です。代表的な型が3つあります。

力を加えるほど粘度が下がるのが擬塑性、ある大きさの力を超えるまで流れないのがビンガム、力を加えるほど粘度が上がるのがダイラタントです。
ケチャップをどの型に入れるかは、資料によって分かれます。ある大きさの力を超えるまで流れにくく、流れ始めると速くかき混ぜるほど粘度が下がるという、1つ目と2つ目を合わせたような性質をもつためです。
容器を逆さにしただけでは、ケチャップ自身の重さによる力が足りず、容器の中で止まったままです。叩いたり振ったりして大きな力を加えると、流れ出すのに必要な力を超えます。流れ始めると粘度も下がるので、一気に出てくるのです。
そのため、ケチャップの粘度は、測るときのかき混ぜる速さで大きく変わります。温度を決めれば値が1つに決まるハチミツと違い、どの速さで測った値かを添えて扱います。
化学工学では撹拌の翼を選び分ける
工場では、原料をタンクに入れ、翼を回してかき混ぜます。粘度の高い液は、かき混ぜても流れが乱れにくく、翼の近くばかりが動きがちです。

ケチャップのような液では、さらに場所による違いが加わります。翼の近くは強くかき混ぜられて粘度が下がり、よく動きます。翼から離れるほど粘度は高く、動きが伝わりにくくなるのです。
力が足りないと、翼のまわりだけが動き、その外側に止まったままの部分が残ることもあります。
そこで、こうした液には、タンクの壁の近くまで届く大きな翼を使います。いかりの形をした翼や、らせん状の帯の翼を回して、タンク全体の液を動かすのです。
撹拌に必要な動力を見積もるときは、タンクの中の平均的なかき混ぜる速さを、翼の回転数に比例するとみなします。その速さでの粘度を使って計算するのです。
まとめ
ケチャップは、ある大きさの力で流れ始め、速く流れるほど粘度が下がる非ニュートン流体です。工場でも、液が受ける力で粘度が変わることを考えて、撹拌の翼の形や動力を決めています。
