ポテトチップスの袋を開けると、外側はきれいに印刷されているのに、内側は銀色に光っています。袋はとても薄いのに、何枚ものフィルムを貼り合わせて作られています。内側の銀色は、何のためにあるのでしょうか?

銀色に見えるのは、プラスチックのフィルムの表面に付けた、ごく薄いアルミニウムの膜です。プラスチックのフィルムは、空気中の酸素や水蒸気を少しずつ通してしまいます。アルミの膜はそれを通しにくくし、光もさえぎって、お菓子が湿気たり、油が酸化して味が落ちたりするのを防いでいます。
内側の銀色は、酸素・水蒸気・光からお菓子を守るアルミの膜です。
5層のフィルムでできた袋
包装用フィルムのメーカー、フタムラ化学の担当者が紹介している例では、ポテトチップスの袋は5層のフィルムでできています。外側から順に、OPP(延伸ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、アルミを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)、PE、CPP(無延伸ポリプロピレン)です。

一番外側のOPPは、中身を守りながら、商品名や絵の印刷を載せる層です。2層目と4層目のPEは、保護を強めるとともに、フィルムどうしを貼り合わせる接着の役目をします。
真ん中のアルミ蒸着PETが、酸素や水蒸気、光をさえぎる層です。一番内側のCPPは、熱で溶かして袋の口を閉じる層で、シーラントと呼ばれます。
外側には印刷のしやすさと強さ、真ん中には気体の通しにくさ、内側には熱で封ができることが求められます。1枚のフィルムでこれを全部そろえるのは難しいので、性質の違うフィルムを重ねて役割を分けているのです。
貼り合わせには、のりを塗らない方法もあります。溶かしたPEを2枚のフィルムの間に流し込み、ロールで押さえて冷やす押出ラミネートです。
プラスチックは、気体を通す
ポテトチップスのような油で揚げたお菓子は、空気中の酸素や湿気、光によって劣化します。油は酸素と反応して酸化し、味やにおいが変わります。光が当たると、この酸化は加熱しなくても進むのです。水蒸気を吸えば、お菓子は湿気てしまいます。
物質には、濃いところから薄いところへ移動する性質があります。この移動が、拡散です。袋の中の酸素や水蒸気が外より少なければ、それらは袋の外から中へ向かって移動しようとします。
プラスチックのフィルムは、この移動を完全には止められません。酸素や水の分子は、フィルムの表面に溶け込み、フィルムの中を拡散して、反対側の表面から出ていくのです。どれだけ通すかは、プラスチックと気体の組み合わせで変わります。
アルミは、気体も光も通しにくい

アルミニウムは、湿気や酸素、光をさえぎる性質に優れています。食品や薬の包装にアルミ箔が多く使われているのは、このためです。お菓子の袋の銀色の層も、この性質で、お菓子が湿気を吸ったり、油が酸化したりするのを防いでいます。
ただし、アルミの膜も完全な壁ではありません。加工メーカーの堀富商工の比較でも、湿気を防ぐ力や光をさえぎる力は、蒸着の膜よりアルミ箔のほうが上です。それでも、プラスチックのフィルムだけの場合に比べれば、通り抜ける酸素や水蒸気はずっと少なくなります。
通りにくさは、層ごとの足し算
化学工学では、膜を通る物質の移動を、電気の流れになぞらえて考えることがあります。膜の通りにくさを「抵抗」とみなすと、重ねた膜の抵抗は、電気の抵抗を直列につないだときと同じく、各層の抵抗の足し算です。
足し算なので、抵抗が飛び抜けて大きい層が1枚あれば、全体の通りにくさはほとんどその層で決まります。お菓子の袋では、それがアルミの膜です。袋の守りの大部分を、このごく薄い膜が受け持っているのです。

その代わり、アルミの膜に傷がつくと、そこが抜け道になります。抜け道は、抵抗の小さい道を並列につないだのと同じです。ほかの部分がどれだけ通しにくくても、気体はそこから入ってきます。紹介した例では、アルミの膜は上下の層にはさまれていて、外からの傷を受けにくくなっています。
アルミ箔ではなく、蒸着の薄い膜
アルミが気体をさえぎるなら、アルミ箔を貼ればよさそうです。ところが、ポテトチップスの袋に使われているのは、アルミ箔ではなく蒸着の膜です。

アルミ箔は、アルミニウムの板をローラーで延ばして(圧延して)作ります。一方、蒸着の膜は、プラスチックのフィルム(紹介した例ではPET)の表面に付けたアルミの層です。
大日本印刷の製品の例では、アルミ箔の厚さ7〜9μmに対して、アルミの層は10〜100nm(0.01〜0.1μm)しかありません。使うアルミがずっと少なく、柔らかいので、ふくらませたり曲げたりする袋に向いているのです。
アルミはごくわずかなので、カルビーのポテトチップスの袋は、重さで一番多いプラスチックに合わせて「プラ」と表示されています(一部の商品を除く)。
蒸着は、真空の中でアルミニウムを加熱して蒸発させ、その蒸気でフィルムの表面に膜を作る方法です。冷やしたドラムに沿って送られるフィルムに蒸気が当たると、蒸気は冷えて固体に戻り、ごく薄い膜になります。

最後は、窒素を入れて熱で閉じる
袋にお菓子を詰めたら、内側のCPPどうしを熱で溶かしてくっつけ、口を閉じます。外側のOPPも同じポリプロピレンですが、フィルムを縦横に引っ張って伸ばしてあり、熱ではくっつきにくくなっています。
伸ばしたフィルムは強く、透明で、印刷にも向くので外側に、熱でくっつくCPPは内側にと、使い分けているのです。

封をする前に袋へ入れるのが、窒素です。カルビーは、空気が入ると油が酸化して味やにおいが変わるため、窒素を入れていると説明しています。窒素で袋をふくらませて、割れやすいチップスを守る役目もあります。中の酸素は窒素で追い出し、外から入ろうとする酸素はアルミの膜で通しにくくしているのです。
重ねるほど、リサイクルは難しい
多層のフィルムには弱点もあります。種類の違うプラスチックとアルミが貼り合わさっているので、素材ごとに分けにくく、リサイクルが難しいのです。
日本で2024年に出た廃プラスチックは911万トンで、材料としてのリサイクル(マテリアルリサイクル)に回ったのは20%、燃やして熱を回収したのが67%です(プラスチック循環利用協会。お菓子の袋に限らない、プラスチック全体の数字)。
そこで、役割の違うフィルムを同じ種類のプラスチックでそろえた包装も作られています。モノマテリアルと呼ばれるもので、リサイクルのときに素材ごとに分ける必要がなくなるのが利点です。TOPPANは、バリアフィルムと同じ素材のシーラントを組み合わせて、高いバリア性をもつモノマテリアルの包装を出しています。
まとめ
お菓子の袋の内側の銀色は、プラスチックのフィルムに蒸着した、ごく薄いアルミの膜です。プラスチックのフィルムは酸素や水蒸気を少しずつ通しますが、アルミの膜はそれを通しにくくし、光もさえぎります。
重ねたフィルムの通りにくさは、層ごとの抵抗の足し算です。守りの中心はアルミの膜で、紹介した例では、ほかの層が印刷や封、貼り合わせを受け持っています。中を窒素で満たして封をすることで、お菓子の味が保たれているのです。

