猫のトイレに敷く猫砂には、おしっこがかかった所だけが固まり、スコップですくって捨てられるものがあります。乾いた粒が、水を吸うとなぜ塊になるのでしょうか?

鉱物系の猫砂の主な原料は、ベントナイトという粘土です。ベントナイトは水を吸うと膨らみ、粘り気が出ます。おしっこを吸った粒は膨らんで隣の粒とくっつき、その部分だけが塊になるのです。

猫砂が固まるのは、水を吸って膨らんだ粘土が、粒どうしをつなぐからです。

ベントナイトは、膨らむ粘土

ベントナイトは、モンモリロナイトという粘土鉱物を主成分とする岩石です。数百万年から数億年前の火山の噴火で積もった火山灰などが、温度や圧力、熱水の影響で変化してできたと考えられています。日本では、山形や宮城、新潟、島根などで掘られています。

主成分のモンモリロナイトの特徴は、水を吸うと元の体積の何倍にも膨らむ膨潤性(ぼうじゅんせい)です。水に混ぜると、粘り気も出ます。

ベントナイトは猫砂のほか、鋳物や土木工事、化粧品などに使われています。米国地質調査所によると、アメリカでは使いみちの約半分(2025年の推定で48%)がペットのトイレ砂です。

結晶は、薄い板の重なり

モンモリロナイトの結晶は、厚さ約1nm(100万分の1mm)の薄い板です。この板が何枚か重なって、1つの粒子になっています。板1枚は、アルミニウムを含む八面体シートを、ケイ素を含む2枚の四面体シートで挟んだ、サンドイッチのような構造です。

モンモリロナイトの板1枚の模式図。アルミニウムと水酸基の八面体シートを、ケイ素と酸素の四面体シート2枚が上下から挟んでいる
四面体・八面体の単位が、平らに連なったシート

ただし、真ん中のアルミニウムは、一部がマグネシウムに置き換わっています。アルミニウムは3価、マグネシウムは2価の陽イオンです。置き換わった分だけプラスが足りず、板1枚はマイナスの電気を帯びます。

八面体シートのアルミニウムイオン(Al³⁺)の一部がマグネシウムイオン(Mg²⁺)に置き換わり、プラスが少し足りなくなることを示す図
この置き換わりを、同形置換と呼ぶ

電気のつり合いをとるため、板と板の間にはプラスのイオンが入っています。天然のモンモリロナイトで多いのは、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムのイオンです。これを層間陽イオンと呼びます。

3枚の層の間に、ナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウムのイオンが並び、全体でプラスマイナスゼロになる模式図
板の間のイオンの種類で、膨らみ方が変わる

板の間に水が入り込んで膨らむ

モンモリロナイトが水に触れると、板の間の陽イオンの周りに水の分子が集まります。これを水和(すいわ)と言います。水和が進んで板と板の間に水が入り込み、間隔が広がっていくのが膨潤のしくみです。

乾いた状態では詰まって重なっている層が、水が入ると間隔が広がって膨らむ様子を左右に並べた模式図
参考:クニミネ工業「ベントナイトについて」

膨らみ方は、板の間の陽イオンの種類で変わります。ナトリウムイオンの多いナトリウム型では、板どうしを引きつける電気の力が弱いのが特徴です。水の中では板が1枚ずつに分かれるまで離れ、間隔は4nm以上に広がります。

2枚の層の間でナトリウムイオンの周りに水が集まり、層の間が大きく開いた模式図。ナトリウム型は層の間を引きつける力が弱く、簡単に膨らむ
カルシウム型は引きつける力が強く、間隔は4nm未満

板の間の陽イオンは、ほかの陽イオンと入れ替えられるのも特徴です。液の中のイオンが、固体の持つイオンと入れ替わる現象を、化学工学ではイオン交換と呼びます。

カルシウム型に炭酸ナトリウムを数%加えると、イオン交換でナトリウム型に近い性質になります。これが活性化ベントナイトです。

膨らんだ粘土が粒をつなぐ

猫砂の粒におしっこがかかると、粒のベントナイトが水を吸って膨らみ、粘り気が出ます。粘り気の出た粒が隣の粒とくっつき、ひとかたまりになるのです。水を吸ったベントナイトが団粒(粒の集まり)を作るこの性質を、粘結性と言います。

灰色の粒の猫砂から、固まった塊をスコップですくった写真(AI生成のイメージ)に、水和した部分は粘り気が出て固まると添えた図
においを抑える脱臭性も、猫砂に生かされているベントナイトの性質(クニミネ工業「ペット用トイレ砂」)

化学工学では、粉から扱いやすい粒を作る操作を、造粒と言います。粒どうしをつなぐのは、粒の間にできる液の橋(液架橋)や結合剤(バインダー)、乾いた後に残る固体の橋などです。ベントナイトは、農薬や鉱業などの造粒で使われる結合剤の1つです。

猫砂の中でも、水と膨らんだ粘土が粒の間をつなぎ、造粒とよく似たことが起きています。おしっこがかかった所だけで粒が集まるので、そこだけを塊としてすくい取れます。

猫砂の粒は、水を加えて作る

水を含むとまとまる性質は、猫砂の粒を作る工場でも使われています。クニミネ工業によると、ペレット状の猫砂は、ベントナイトに水を加えてミキサーで混ぜ、造粒機で粒の形にして作ります。ベントナイトは、水を含ませるだけで造粒できるからです。

できた粒は乾燥機で乾かしてから、ふるいにかけて大きさをそろえます。大きさで粒を分けるこの操作が、分級です。長い粒は切ってもう一度ふるいへ、短い粒は原料へ戻す流れです。

ベントナイトは、乾かすと水を放して硬くなり、また水に触れると水を取り込みます。乾かしても性質が失われないので、工場で水を使って作った粒が、トイレでもう一度おしっこを吸って固まるのです。

鋳物の砂型や、土木の工事でも

粒どうしをつなぐ性質は、鋳物の型づくりにも使われています。鋳物は、溶かした金属を型に流し込み、冷やし固めて作る金属製品です。型の材料は、珪砂(けいしゃ)にベントナイトと水を加えて練り合わせた砂です。

水と結びついたベントナイトには、力を加えて変えた形のまま元に戻らない性質(可塑性)があります。砂の表面をベントナイトが覆うので、砂も同じ性質を持ち、押し固めると型の形を保ちます。

砂とベントナイトと水を混ぜると、砂粒の間にベントナイトが入って、砂粒どうしをつなぐことを示す模式図
参考:クニミネ工業「鋳物生型砂用」

土木の工事で使う例の1つが、ベントナイトを混ぜた泥水です。地中にコンクリートの杭を作るために掘った穴をこの泥水(安定液)で満たすと、穴の壁に薄い泥の膜ができます。膜が泥水の地盤へのしみ込みを抑えて、壁が崩れるのを防ぐしくみです。

ため池などの水漏れを防ぐ工事では、ベントナイトを混ぜた土を池の底や周りに締め固め、土の隙間をふさぎます。

まとめ

ベントナイトの主成分モンモリロナイトは、マイナスの電気を帯びた薄い板の間に、プラスのイオンを挟んだ結晶です。水に触れるとイオンの周りに水が集まり、板の間に入り込んで膨らみます。

猫砂が固まるのは、膨らんで粘り気の出た粘土が、粒どうしをつなぐからです。同じ性質は、猫砂の粒を作る造粒や、鋳物の砂型、土木の工事にも生かされています。